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最高裁判所第三小法廷 昭和27年(オ)82号 判決 1954年7月06日

主文

原判決を破棄し本件を高松高等裁判所に差し戻す。

理由

上告代理人福田亀之助の上告理由は後記のとおりである。

上告理由第二点について。

原判決は、上告人(控訴人)の罹災都市借地借家臨時処理法二条による土地賃借の申出により賃借権を取得したとの主張を排斥する理由として、同条に基づいて賃借の申出をするには「同条但書により同地上に建物を築造するについて地方長官の許可を得るか又は尠くともその許可の申請をした上でその許可あることを停止条件としなければならない」にかかわらず上告人(控訴人)は香川県知事の許可を得たこと又はその手続をしていることにつき何等主張立証をしないから、上告人(控訴人)の右賃借の申出はその効力がないものと説示している。なるほど、前記臨時処理法二条一項但書は、他の法令によりその土地に建物を築造するについて許可を必要とする場合にその許可がないときはその申出をすることができないと規定しているが、ここにいう許可を必要とする場合とは、警察目的等のために建物を建築するについて事前に許可を要するというような場合をさすのではなく、例へば都市計画法又は特別都市計画法並びにその附属法令の規定するように、一定の土地の境域内における建物の建築が一般的に制限されており、ただ許可があるときにのみ特にその建築が可能となる場合を意味するものと解しなければならない。ところが原判決の説示によつては、本件建物が如何なる土地の境域内に存し如何なる法令によりその建築につき地方長官の許可を必要とするのか等を知ることができないので、本件の場合が前記臨時処理法二条一項但書に該当するのか否かを判断することができない。すなわち、原判決には上告人の主張を排斥するについて理由不備の違法がありこの点において本件上告は理由があるので原判決は破棄を免れない。

よつて、他の論旨に対する判断を省略して民訴四〇七条に従い、裁判官全員の一致した意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 井上登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 本村善太郎)

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